アイデンティティ

大沼先生「そーまくん、アイデンティティについて考えてみたことある?」

そーまくん「はい。自分が誰なのかってことですよね。就活のときとか、すごく悩みました」

大沼先生「なるほど。でもね、『自分が誰なのか』って、実はもっと根本的な問題なんだよ」

そーまくん「どういうことですか?」

大沼先生「今の社会では、アイデンティティというと、『私は学生です』『私は日本人です』『私は女性です』といった、社会的な属性で語られることが多いよね」

そーまくん「確かに。エリクソンの発達段階論でも、青年期の課題として『アイデンティティの確立』が挙げられてますよね」

大沼先生「そう。でもちょっと考えてみて。学校を辞めても、国籍が変わっても、あなたはあなたでしょう?」

そーまくん「あ...なるほど。確かにそうですね」

大沼先生「じゃあ、『私が私である』という、最も基本的な事実は何に支えられているのかな?」

そーまくん「うーん...」

大沼先生「本質的な条件は三つあるんだ。身体、意識、他者」

そーまくん「身体は分かります。でも意識と他者は、どういう意味なんですか?」

大沼先生「簡単な例を挙げよう。深い眠りの中で意識がないとき、『私』はそこにいるのかな?」

そーまくん「あ!確かに、意識がないと『私』という感覚もないですね」

大沼先生「そう。他者についても考えてみて。もし宇宙に自分しかいなかったら、『私』という区別は必要ないよね?」

そーまくん「なるほど!他者がいるからこそ、『私』という区別が生まれるんですね」

大沼先生「その通り。私たちは、身体があり、意識があり、他者との関係の中で、つねにすでに『私』として存在している。これが『生きられた私』なんだ」

そーまくん「『自分探し』の前に、すでに存在している『私』があるということですか?」

大沼先生「その通り。脳科学や心理学の知見を現象学的に解釈しながら、そんな『私』のあり方を探っていくんだよ」

そーまくん「面白そうですね!早速どんどんいきましょう!」

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